ネコの飼育頭数が犬を上回る公算大、ネコ市場拡大の理由〈AERA〉

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6/15(木) 16:00配信

AERA dot.

 犬は「フレンドリー」だけど、猫は「ツンデレ」。猫好きにはたまらないその魅力が変わるかもしれない。人工増殖と給餌が野生を奪い、「犬っぽい猫」が増えているのだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。猫ブームの勢いが止まらない中、ペットの世界に何が起きているのか。AERA 2017年6月19日号では、ペットを大特集。

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 止まらない猫ブームの勢い。犬の飼育頭数が減少する中、猫人気は相変わらずだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。

 長らく犬が君臨してきた「ペット王者」の座に、猫が肉薄している。

 一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2016年の猫の推計飼育頭数は984万7千頭。これに対し、3年前までは1千万頭を超えていた犬の飼育頭数は987万8千頭と年々減少しており、犬と猫の差が縮まってきている。

 この背景について、猫ブームがもたらす経済効果「ネコノミクス」を約2兆3162億円と試算した関西大学名誉教授の宮本勝浩さんは、こう分析する。

「毎年のワクチン接種や、毎日の散歩が必要な犬に比べると、猫は飼い主の手間や飼育にかかる費用が少なく済みます。少子高齢化が進行し、単身世帯や夫婦だけの世帯が増える中、少ない負担で癒やしを与えてくれるのが猫なのです」

 ネコノミクスは飼い主の支出だけにとどまらない。たとえば、和歌山電鉄貴志川線の名物猫「たま駅長」は、和歌山県の観光に40億円もの経済効果をもたらしたとされる。そのほか、猫の写真集や本、グッズの売り上げなども含まれる。「自分で飼うほどではない」層からも、猫は犬よりも共感を集めやすいのだという。

「犬の場合、犬種によって好みが分かれて人気は分散しがちですが、猫好きな人々はどんな猫でも可愛いと思う傾向が強い」(宮本さん)

●「ネコの手を借りるか」

 ネコノミクスは不況にあえぐ出版業界も潤しており、昨年末に発行した小誌の臨時増刊「NyAERA(ニャエラ)」は大反響を得た。そのほか、女性自身の「ねこ自身」、ザテレビジョンの「ザテレビニャン」、LDKの「ネコDK」など、人気雑誌が次々と「ネコ増刊」を出す中、業界誌までもが猫特集を組んで話題を集めた。

 建築に携わる人のための専門誌「建築知識」(エクスナレッジ)が、17年1月号で「猫のための家づくり」という大特集を組んだのだ。動物行動学者やペットを得意とする設計士の協力を得て、猫の生態や身体能力を踏まえた住まいづくりを提案した力の入った内容で、発売と同時に大きな反響を呼んだ。売り切れ書店が続出し、たちまち4万部を完売、ネット書店では今も中古本がプレミア価格で取引されているほどだ。異例の特集を組んだ背景について、三輪浩之編集長はこう話す。

「住宅産業も少子高齢化に苦しんでおり、『ネコの手でも借りるか』と思い切った特集を組んでみたところ、本来のターゲットではない一般の方がたくさん購入してくれて驚きました。放し飼いが多かった昔と違い、完全室内飼いが主流になる中で、猫も人も快適に過ごせる住まいづくりに対するニーズの高まりを実感しました」

●猫と人間の共生

 著名なエコノミストやコンサルタントを抱える三菱UFJリサーチ&コンサルティングには、ネコのエコノミストを意味する「ネコノミスト」を自任する研究員がいる。国際協力を専門とする武井泉主任研究員と、産業政策が専門の北洋祐研究員だ。2人とも自宅で猫を飼う愛猫家である。

「自治体や企業などに政策を提言できる私たちの本業を生かして、猫と人間がより幸せに関わる社会をつくれないかと、2年前に社内の動物好きが集まって自主研修グループを作ったのがきっかけです」(武井さん)

 同社は武井さんらの活動を社会貢献の一環として評価し、予算をつけた。メンバーは本業の傍ら、迷子や飼育放棄などで収容されたペットの殺処分問題を中心に海外の取り組みを調べたり、自治体やNGO、業界団体などにヒアリングを重ねたりして、猫と人間の共生のあり方や政策について調査研究を行っている。

「保護猫の扱いに頭を悩ませる自治体などから相談も受けるように。昨年は委託調査を受注して、『ネコノミスト』として売り上げをあげることもできました」(北さん)

 行き場を失ったネコを殺処分から守り、適切な飼い主候補とマッチングさせる場も広がっている。NPO法人東京キャットガーディアンでは、特に里親が見つかりにくい成猫と暮らせる物件を紹介するポータルサイト「しっぽ不動産」を運営する。

●留守中の世話を解決

 不妊や去勢を怠ったことで飼い猫が繁殖し、何十頭にも増えて生活が破綻する「多頭飼育崩壊」などで保護された猫と一緒に暮らせる「猫付きシェアハウス」や、ボランティアとして保護猫を預かって同居できる「猫付きマンション」などが掲載され、空室待ちも出る人気だ。家主側の空室対策としても注目されている。これらの物件に住み、退去した人は全員、パートナーとなった猫を連れて新しい家に引っ越しているという。

 将来の「猫市場」で特に期待できる分野について、最新の技術動向に詳しいネコノミストの北さんは、「ペット」と「テクノロジー」を融合させた「ペットテック」を挙げる。とくにIoT(モノのインターネット)を活用したデバイスが有望だという。

「IoTを活用したペット家電は5年以内に普及すると考えています。現状のペットテックは欧米のベンチャー企業が先行していますが、本来は日本企業が得意とする技術を活用できる分野。どんなにペット人気が拡大しても、少子高齢化の日本市場だけでは限界がありますが、世界に目を向ければ大きなビジネスチャンスとなるはずです」

 17年になって、日本発のペット用IoTデバイスも続々と登場している。

 ペットボードヘルスケアは、飼い主が留守中でもえさを与えられる自動給餌機「スマートごはんサーバー ハチたま」(1万4800円)の販売を5月に開始した。離れていても、アプリでえさの量や時間を設定できるうえ、本体にネットワークカメラを搭載し、ペットの様子も映像で確認できる。

「留守中の世話は飼い主の悩みの種。ペットホテルに預けなくても、自宅で安心して留守番させられるデバイスをつくろうとクラウドファンディングなどで資金を調達し、開発に踏み切りました」(堀宏治社長)

 5月末の発売から2週間足らずで、100台を売り上げた。対象とするペットは猫と小型犬だが、猫の飼い主の購入が多いという。

●支出総額は月3千円

 システムインテグレーターのオープンストリームは、首輪につけた発信器とiPhoneアプリで猫の居場所を特定できる「ねこもに」(オープン価格)を6月19日に発売する。猫が身につける発信器は10グラムと軽く、1年間充電が不要だ。GPSではなくブルートゥースを利用することで、小型軽量化と低価格化を実現したという。

 猫の気持ちがわかるデバイスもある。首に装着した運動量センサーで、犬や猫の行動を解析し、活動記録とともに「動物のキモチ」としてスマホに表示する「しらせるアム」(アニコール)は、ベータ版先行販売の予約を受け付けている。

 こうした最新の猫グッズやサービスは便利だが、利用するほど飼い主の経済的負担は重くなる。それでもネコノミストの武井さんは、「猫は犬と比べれば、コストが少なくて済むこともメリット」と話す。ペットフード協会の調査結果を見ても、1カ月あたりの猫に関する支出総額(医療費などを含む)の中央値は3千円と意外に安い。

「今後、産業として伸びるのは、ペットと飼い主の『家族化』に対応する製品やサービスと考えられ、家族同様に出費を惜しまない人が増えてはいくでしょう。でも、そんなにお金をかけなくても愛情を持って関われば十分幸せな関係は築けます。猫との暮らしは意外にリーズナブルなんですよ」(武井さん)

(ライター・森田悦子)

※AERA 2017年6月19日号


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