2019年3月アーカイブ

常福寺(東京都世田谷区)にある猫に特化した訪問葬儀サービス「キャットPaPa」では、動物納骨堂「佛性苑」内の仏像の下の合同墓に納骨する合同埋葬プランがある(撮影/今村拓馬)

常福寺(東京都世田谷区)にある猫に特化した訪問葬儀サービス「キャットPaPa」では、動物納骨堂「佛性苑」内の仏像の下の合同墓に納骨する合同埋葬プランがある(撮影/今村拓馬)

動物納骨堂「佛性苑」には個別の納骨スペースもある(撮影/今村拓馬)

動物納骨堂「佛性苑」には個別の納骨スペースもある(撮影/今村拓馬)

 ペットを弔う方法として、訪問葬儀という選択肢が人気になっている。霊園まで出向く必要がなく慣れた自宅で行えるのがメリットだ。何よりも「ちゃんと送ってあげられた」という満足感を得られる。

【個別の納骨スペースの写真はこちら】

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 訪問葬儀社から到着の連絡があったのは、土曜日の午後1時過ぎだ。埼玉県在住の女性(69)はスタッフを自宅に迎え、少し驚いた。黒い服に身を包んだスタッフの物腰が、神妙で丁寧だったからだ。もっと事務的に進むのかと思っていた。

 リビングの真ん中の猫用ベッドには、花束に囲まれた愛猫が横たわる。高齢で体が弱り食べなくなって3日、2人の子どもも仕事終わりに県外から駆けつけ、金曜の明け方、夫(72)と家族4人でみとった。18歳だった。

「お口を清めてあげてください」

 そうスタッフに説明され、ペット専門の神社で受けたという道具で末期の水を行い、ハッカ油の香るタオルで体を拭いた。

 ペット用の小さな念珠(ねんじゅ)もあるという。夫が前脚に念珠をつけると、ほっと息が漏れた。大切に扱われているという実感に、どこかにあった「人の葬儀も大変な時代に、動物に大仰なことをするのは」という後ろめたい気持ちがほぐれていく。

 火葬車まで愛猫を運び、花束で体を囲んだ。好きだったおやつも入れた。火葬を待つ間、遅い昼食をとり、愛猫の思い出話をした。約2時間後、まだ温かい骨を全員で拾った。

 ペット葬儀を行うのも訪問葬儀を頼んだのもはじめて。いま、女性の胸に残るのは、「ちゃんと送ってあげられた」という満足感だ。小さな骨壺には、両脚をそろえ、こちらを見つめる愛猫の写真が添えられている。

「夫は大病をしたばかりで遠出する体力はない。私と子どもは働いているし、休日に自宅でできてよかったと思います」(女性)

 ペットフード協会の2018年の調査によると、全国の推計犬・猫飼育頭数は合計1855万2千頭(犬890万3千頭、猫964万9千頭)にのぼる。だが、必ず迎える死について、ペットの死体の扱いを定める法律は今のところない。日本女子大学消費生活研究室の細川幸一教授はこう指摘する。


「ごみとして出していい、別料金で引き取る、一切扱わないなど、動物の死体の扱いは自治体によりまちまち。ペット火葬を行う自治体もあるものの、まだ多くなく、返骨のないところが大半です。社会の実情に追いついていません」

 多くの飼い主が民間のペット葬儀を利用するなか、特に注目されているのが、冒頭の訪問葬儀だ。訪問葬儀は固定火葬炉のあるペット火葬場ではなく、移動火葬炉を積んだ車両で火葬する。人が霊園まで出向く必要がなく、慣れた自宅でペットを送れるというメリットがある。

 女性が葬儀を依頼したジャパン動物メモリアル社によると、訪問葬儀の依頼は年々増加し、同社が行った訪問葬儀は3年間1都3県で1万5千件にのぼる。料金はプランとペットの体重ごとに設定され、女性が利用した「家族立ち会い葬」は6キロ以下で2万7千円(税込み・出張費込み)。週末や、平日なら家族の集まる夕方や夜間の依頼が多い。犬や猫が多数を占めるが、ウサギや小鳥やアロワナ、蛇まで、動物の種類はさまざまだ。(編集部・熊澤志保)

AERA 2019年3月11日号より抜粋

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