2019年6月アーカイブ

6/25(火) 8:00配信

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 ペットの高齢化が進むなか、ペットと一緒にお墓に入りたいと考える人が増えている。しかし、寺院や霊園側の環境整備は十分ではない。仏教界には、犬猫は「畜生道」に位置するため、人間と一緒に埋葬するのは適切ではないとする考え方もある。大切な「家族の一員」と一緒にお墓に入る方法を探った。

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 ペットの数が子どもの数を上回った現在。2000年代前半に訪れたペットブームのときに飼われた小型犬や猫たちが高齢化し、にわかに"ペットの終活"が注目を集めている。

 なかでも需要が増えているのが、ペットの葬儀とお墓だ。都内でペットの葬祭業を行う「ペットPaPa」(ECOアース株式会社)代表の高橋達治さんによると、一年間で取り扱うペットの立会個別火葬の件数は約1500件。うち、300件ほどは寺院で火葬しているという。

「いまは火葬炉を搭載した火葬車でご自宅までうかがい、ペットの火葬だけを行うケースが増えています。一方で、人と同じように葬儀をあげたいという方も増えている。そのような方のために、弊社では猫専門(キャットPaPa)の施設として、お寺の一角を借りて火葬できるサービスも行っています」

 都内在住の前澤直子さんは、昨年、都内にある常福寺の樹木葬墓地の一角に自身の墓を購入した。決め手は「亡くなった猫と一緒に入れること」だったと言う。


「10年前に愛猫を亡くしました。その後火葬はしたものの、近くに一緒に入れるお墓がなくて、ずっと自宅に骨壺を飾っていたんです」

 前澤さんは現在一人暮らし。将来のことを考えると、いつまでも自宅に置いてはおけないと思った。

「寂しいけど、猫の遺骨なんて他人からしたらゴミ同然ですよね。だから自分が元気なうちに、お墓に入れてあげたいと思いました」

 現在、墓には2匹の愛猫が眠っている。最終的には自分も同じ墓に入る予定だ。

 埋葬する前は、遺骨を手離す不安が大きかったが、実際は「ちゃんとお墓に入れられて、気持ちがすごく楽になった」と言う。

「家とは別に、手を合わせる場所ができたことが大きいですね。普段の生活との切り替えができるようになって、気持ちが沈み込むことも少なくなりました」

 前澤さんがお墓を契約した常福寺は、11年前から犬や猫などのペット供養を始めた。同住職で、動物供養協議会の理事長を務める津村乗信さん(57)は、「ペットを手厚く葬りたいという飼い主の要望は10年以上前からあった」と語る。

「11年前に始めたペットの合同供養祭は、初回から満員で150人ほどいらっしゃいました。今は年2回開催で、1回あたりの定員も350名に増やしましたが、それでもキャンセル待ちの状態です」

 供養祭の参加者と話す中で、津村さんは、ほとんどの飼い主がペットのことを「自分の家族」と表現することに気づいた。

「犬や猫はだいたい15歳前後で亡くなることが多い。飼い主の皆さんにとっては、愛しいわが子に先立たれたようなものです」

 こうした飼い主の心情を知り、常福寺では6年前から「人とペットが一緒に入れるお墓」を整備した。

 現在、墓石タイプの霊園150区画のうち、8割は埋まっているそうだ。また、樹木葬墓地も250区画中100区画ほど売れている。そのうち30区画ほどは、実際に人とペットが一緒に眠っているという。

「ここ2年は『ペットと一緒に入れるから』という理由でお墓を購入される方が多いですね。6年前は全体の1?2割だったのが、今では半数近くに上ります」

 ペット葬の歴史と仏教界の動向をまとめた『ペットと葬式』の著者で、ジャーナリスト兼僧侶の鵜飼秀徳さん(45)は、「居住空間の変化がペットの"家族化"をうながした」と指摘する。

「数十年前まで、ペットは庭先で飼うのが当たり前。特に犬は"番犬"としての役割を与えられていました。ところが昨今の小型犬や猫ブームによって室内飼育が増えたことで、人間とペットの主従関係が薄れた。これによりペットは、家族内のマスコットキャラクターのような存在になりました」

 実際に、一般社団法人ペットフード協会発表の「全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の室内飼育の割合は年々増加。04年時点で60.1%(2人以上世帯)だったのに対し、18年は85.7%と、14年間で約25ポイント上昇した。

「特に都市部では、退職後に一軒家からコンパクトなマンションに住み替える高齢者も増えた。そこでペットを室内飼いして、新しいわが子のような存在になるケースもある」(鵜飼さん)

 その一方で、ペットの埋葬に関しては、寺院・霊園側の意識や環境整備が追いついていないのが現状だ。

 常福寺住職の津村さんによると、ペットの火葬だけはしたものの、一緒に入れるお墓が近くに見つからずに相談に来る人が圧倒的に多いそうだ。

「先日も、千葉県にお住まいの方が見学に来られました。ペットと一緒に入れるお墓は、まだ全国的に少ないのではないでしょうか」


 なぜ増設が進まないのか。「いくつかの理由がある」と、鵜飼さんは指摘する。

 一つは「墓地埋葬法」の問題だ。この第1条には、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする」と書かれている。

「問題になるのは、『国民の宗教的感情』と『公衆衛生』の部分です。感情面では当然、犬猫が嫌いで『同じ墓地に埋葬してほしくない』という方もいます。また、動物の骨は法律的には廃棄物ですから、それを墓に入れるのは衛生上問題があるという見方もできる。そのためペットの埋葬を避ける墓地や霊園は多い」

 仏教の宗派によっても賛否は分かれる。例えば、天台宗や真言宗などは、動物であっても皆「仏性(ぶっしょう)」(仏になれる本性)を持っており死後、すぐに成仏できると考える。

 一方で浄土系では、阿弥陀仏に帰依し、念仏を唱えることで、往生・成仏できると考える。そのため、念仏を唱えられない動物は、死後すぐには成仏できないという見方が存在する。

 また、死後の世界の六道では、ペットは人間道よりも下位の「畜生道」に位置する。だから、人間と一緒に埋葬するのは適切ではないという意見もある。

「仏教界でも見解はさまざま。なので、ペットと同じお墓に入りたい方は、まずは近隣の寺や霊園に相談してみてはいかがでしょうか」

 では具体的に、どのようにお墓を探せばいいのか。

 東京都中央区に本社を置く株式会社鎌倉新書では、03年から全国の墓地や霊園を検索できるポータルサイト「いいお墓」の運営を開始した。サイトでは、各墓地の設備、広さ、価格、所在地のほか、実際に購入した人の口コミなどを無料で閲覧できる。お墓の購入に関する相談件数は、年間約14万件にも上るそうだ。

同社執行役員の田中哲平さん(37)は、「ペットと一緒に入れるお墓を紹介してほしいといった問い合わせは年々増えている」と話す。実際の問い合わせ内容を見ると、「ペットと一緒に入れるお墓をもっとプッシュしてほしい」「近くにペットと一緒に入れる霊園がなくて困っている」といった意見が散見された。

「こうしたご要望を受けて、6年前から全国の『ペットと一緒に入れる墓地や霊園』をサイト内で検索できるようにしました」

 一緒に入れる墓地や霊園は、全国に347件(19年6月11日現在)。墓地や霊園の総掲載数は約8千件あるため、比率としては5%にも満たない。

 そのため条件の良いお墓には応募が集中し、すぐに完売してしまうことも珍しくないそうだ。

「ペットと一緒に入れるお墓にも、いろいろなタイプがあります。まず、人とペットが同じ区画に入れるタイプ。次に、敷地の中で、ペットと入れる区画とペット禁止の区画が分かれているタイプ。最後に、同じ区画には入れないが、同じ敷地内にペット用の供養塔があるタイプ。さらに供養塔にも合祀するタイプと、遺骨を個別に置けるタイプがありますから、条件を細かく調べる必要があります」

 ペットと入れるお墓で、最も多いのは三つ目の「供養塔タイプ」なのだそう。逆に同じ区画に入れるタイプは少なく、全国でも70件ほどではないかという。

「お墓の価格は、不動産と同じで、建てる場所と広さによって左右されます。新しく建てる場合であれば、墓石代込みで150万円くらいが全国平均ですね。樹木葬墓地の場合は、墓石がないので幾分安めです。ペットと一緒だからといって高くなることはありません」

 費用を安く抑えたい場合は、都市部限定だが、ペットと一緒に入れる「自動搬送式の納骨堂」も出てきている。また、あわせて探したいのが、ペットの葬儀業者だ。都市部を中心に増えつつあるが、業者によって選べるコースも値段もマチマチ。さらにごく一部ではあるが、過大請求や遺体の不法投棄を行うなど、悪質な業者も存在するという。

 では、どのような点に気を付ければいいのか。

漫画『ネコちゃんのイヌネコ終活塾』(WAVE出版)で、ペットの葬儀や介護、ペットロスなど、ペットの「終活」について描いた漫画家の卵山玉子さんが、安心な業者を選ぶ三つのポイントを教えてくれた。

「一つ目は、ペット葬儀の協会に加盟していること。協会名が架空のものである可能性もあるので、その業者が所属している協会の活動履歴も調べることが大切です。二つ目は、口コミサイトや実際に利用した人から情報を集めて比較し、何件か候補を見つけておくこと。三つ目は、実際に施設を見学させてもらえるか。電話対応などに違和感がある場合は避けたほうが無難」

 卵山さんは、作品を描くための取材を通じて「ペットや自分のためにも、ペットが元気なうちに老後や死後の準備を進めておいたほうがいい」と感じたそうだ。

「愛するペットが亡くなれば、だれしも気が動転します。そのときになって初めて葬儀会社を手配しようと思っても、冷静な判断ができず不本意な結果になってしまうことも。火葬は移動火葬車に来てもらうのか、お寺で行うのかなど、具体的に考えておいたほうが、後々後悔は少ないと思います。遺骨を埋葬するか、手元で供養するかは、火葬後にゆっくり考えてもいい」

 また、死後にやるべきことを具体的にしておくことで、ペットロスを緩和する効果もあると言う。

「取材を進めるうちに、ペットの葬儀は『飼い主の気持ちの整理にもなる』と感じました。葬儀の仕方に決まりごとはありません。だから飼い主が納得する方法で供養してあげるのがいちばんだと思います」

 実際にペットの死に立ち会うと、あれもこれもしてあげれば良かったと、後悔の念が湧いてくる人も多い。

「だからこそ、生前に見送り方をじっくりと考えておいたほうがいい。『最期まで丁寧に見送れて良かった』という実感が、ペットを失った悲しみから立ち直る糸口にもなると思います」

 愛する家族だからこそ、別れ方もきちんと考えたい。


※週刊朝日  2019年6月28日号


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